kiwakoto

特別であるさま、という意味をもつ京都に根付いた職人による匠の技を駆使した、遊び心満載にカーライフを彩るプレミアムブランド=kiwakotoをご紹介いただいたのは、つい最近のこと。

 

 

「キワコト」は古語で「際殊」といい、なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれと活用する形容動詞。源氏物語五十四帖の巻名の一つ、第五十三帖に第三部の「宇治十條」の第9帖にあたる「手習い」の中で「きはことなる様ぞし給(たま)へる」と登場しています。

 

 

これは、主人公光源氏が政界の頂点に立ち、娘を天皇家に嫁がせるという、この物語で最も幸福感に満ちている場面。かつて六条御息所が何気なく書いた文字の見事さに対し、「あれは『キワコト』=別格だった」と彼が言うのです。

 

 

お互いに愛し、愛されていても正妻にはなれない六条御息所は、10年の関係を断ち切るべく伊勢へと移り住む決心を固め、それが2人の永遠の別れに。

 

 

「暁の 別れはいつも 露けきを こは世にしらぬ 秋の空かな」

 

 

愛しい人と離れ離れなる夜明け前の別れはいつも涙がちだが、特に今日は世にまたとないほど悲しみの涙で霞んだ秋の空だ、と悲しい秋の別れの歌。でも、そんな時に彼女の文字の見事さと知性を思い出すと言う物語の展開がとても素敵だと思うのです。時を経てもなお、京都に根付いているこの知性こそが匠の技を産み、育てていったのかもしれません。

 

 

 

贅沢とは、他を寄せ付けない独自性のある美しさだと私は感じています。

 

 

Kiwakotoもサイト中で、そんな歴史が育んだ伝統と技術、匠の技が生きる町を中心とした他には例を見ないカーライフを追求するブランドだと語っています。

 

 

スタッフの方々に話を伺って何より驚いたのは、この熱い想いが込められた事業が会社全体のブランディングのためのトップダウンでも、利益を追求したマーケティング先行のものでもなく、ボトムアップの企画だということ。ディレクターの未来へ繋げるべき新たな価値を提供したい、という挑戦し続ける姿勢が周りの人たちを動かしているんです。

 

 

 

 

今回はkiwakotoに京都にお招きいただき、パートナーであるいくつかの職人さんの工房を見学させていただくという機会をいただきました。

 

 

豊かな時間を過ごすために考えられたユニークなアイテムたちは、その制作工程や技術などを知らなくても、存在だけでハッと目をひきます。ドライビングシューズやバッグ、クッションをはじめ、ドリンクホルダーに置く一輪挿し用の花器や、香用の清水焼の器など、必然性ではなく創造性に富んだものばかり。野点セットは、なんと茶釜付きです。

 

 

 

 

乗り物の進化で人間の生活は大きく変わりました。19世紀後半から始まった人とガソリン自動車との関わりは、現在はある程度成熟している状態ですが、乗り物の進化で失ったものも。時間と心の余裕の葛藤の中で、高い技術に裏付けられた唯一無二なものづくりを行い続けることで生まれる尊いアイテムたちは、私たちを今とは違う美しい世界に連れて行ってくれると思います。

 

 

利便性の向上に最もプライオリティが持たれつつある現在、大量生産ではなく本質的なものや価値観をいかに残していけるのか、繋いでいけるのかということを常に考えるのですが、今回の工房巡りで未来に進むために守るということの重要性を改めて感じました。

 

 

追ってレポートしていきます。

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