早緑月

 

「宇治のお茶には深い歴史があって、そこには到底叶わない。宇治からたくさんの教えをいただいて、今の八女茶がある。」

 

 

という八女の方の言葉………宇治の歴史とストーリーに対するリスペクトの心がとても美しいなぁと。

 

 

東京に住んでいると、日本茶といえば静岡か宇治の流通量が多いのか(生産量も静岡が群を抜いて1位だし、とはいえ京都はそんなに上位でもないのですが)、あまり知らなかったからなのか八女茶を目にすることが少なかった気がします。飲食店で無料で提供されることも多いお茶の生産地がどこかを気にすることって通常はあまりなかったかもしれない。水を買う時すら、産地がどこかで選ぶのに。

 

 

 

 

 

京都の老舗茶筒屋 開花堂の八木さんの取材に同行し、工房見学をさせていただいていた時のこと。

 

 

「最近、日本茶のお勉強してるんです。いつか宇治に行こうと思っていて……」話しの流れの一言で、「明日、行ってきたら!」と。ご親切にその場で宇治のお茶屋さんをご紹介いただくことに。さらには、宇治茶だったら朝日焼を見ないと!とそちらも繋いでくださいました。

 

 

次の日の朝、張り切って宇治の通圓茶屋へ。創業は1160年、宇治駅からすぐのところにある江戸時代の町屋の遺構を残す建物は店舗として今も健在。当時の茶壺や暖簾がそのまま残っていて、ノスタルジックでとても良い雰囲気です。

 

 

1160年というと平安時代からということ。通圓のサイトには、足利義政や豊臣秀吉、徳川家康らがここでお茶をしたことが記されている、と。これは歴史やその背景にあるストーリーには敵わない!というのがもっともです。お茶をいれてくださった通圓祐介さんは24代目……。

 

 

最近、伝統工芸の家業を継いでいらっしゃる方とお会いすることが多いのですが、新しいカタチを作ろうとしているのが印象的。皆さんプレッシャーや、若い頃は抗う気持ちもあったのかもしれませんが、なにより楽しんでいるのが感じられて、それって本当に素晴らしいこと。受け継ぐ、家を継ぐって、わたしなんかが想像するよりもずっと大変なことなんだろうなと。

 

 

比べると八女茶の歴史はまだ100年に至っていない。宇治の背中を追いかけ、品評会ではある意味その背中を追い抜き追い越したけれど、ルーツに対してきちんとリスペクトを持っている関係性は、ワインでいうフランスとニューワールドみたいだなと思ったわけです。(もちろん、わたしが勝手にそう感じただけなのですが)

 

 

 

 

 

 

「土地も作り手も違うとなると、同じお抹茶でもすごく違うんはすだよね。お抹茶ってお茶と違って飲み比べしたことないね。」

 

 

尊敬する和食の料理人の方とそんな話しをしていたところ、お抹茶の飲み比べをしてみようということになりました。いつもお店でつかっている抹茶と、八女の抹茶の松竹梅をお菓子に合わせて比べてみようと嬉しいお誘い。もちろん、焼きたてのお菓子付き!

 

 

わたしの舌が未熟だということもあるけれど、八女茶の竹梅は正直あまり違いというものを感じられなかった。(星野製茶園の集大成!と言われているお抹茶はまた次の機会にいただきます)でも、宇治とは驚くほどの違いを感じました。やはり飲み慣れた味だなぁと感じるのは宇治の方だけれど、八女はなんともふくよかで柔らかくて。合わせるお菓子の酸味や甘みに応じて合わせを変えると、楽しみに幅ができるのではないかと。

 

 

今後も不定期ではありますが、産地と作り手の違いを比べて楽しんでみようということに。季節や気温、体調など様々なことが変わっていくので、いつやっても楽しいんじゃないかと今からワクワク。好き嫌いはあるかもしれないけれど、個性を見つけてそれを楽しむのは、とても贅沢な時間になると想像しています。なんども反芻して、目や舌からだけではない感覚もあじわえるようになれたらいいな。

 

 

 

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