六月柿とは、トマトの古い呼び名または異称。
広辞苑にもあるきっと誰かが命名したであろう「六月柿」という名称ですが、「トマト」と調べても、その解説の中にきちんとした回答はありません。
自分なりに、「六月柿」という古語の存在について考えてみました。
ウィキペディアによるとトマトは、
【日本には江戸時代の寛文年間頃に長崎へ伝わったのが最初とされる。貝原益軒の『大和本草』にはトマトについての記述があり、その頃までには伝播していたものと考えられている。ただ、青臭く、また真っ赤な色が敬遠され、当時は観賞用で「唐柿」と呼ばれていた。中国では現在も「西紅柿」と呼んでおり、西紅柿炒鶏蛋(鶏卵との炒め物)などとして料理される。日本で食用として利用されるようになったのは明治以降で、さらに日本人の味覚にあった品種の育成が盛んになったのは昭和に入ってからである。】
と記載されています。
「六月柿」と呼ばれていた当時は、まだトマトは食用ではない。
そして、トマトは夏の季語ですが、赤く色づき旬を迎えるのは6月。これは、今も昔も変わってないようです。
これらのことから考えると、観賞用として赤く美しく色づきはじめたトマト(「唐柿」)のことを「六月柿」と呼んでいたのではないかと。
過去に思いを巡らせながら考えていくうちに、日本人の感性の原点には移ろいゆく季節の中に美しさを見出す繊細な感覚があったんだなと改めて感じます。
自然と神は一体化している、そして身近なものにも魂が宿る、と考えていた日本人だからこそ、こうした様々な言葉が生まれてきたのかもしれません。
ちなみに、トマトの語源はメキシコ湾をのぞむベラクルス地方のアステカ人が「膨らむ果実」を意味する「トマトゥル」と呼んだのが始まり。そして、「トマトゥル」は元来「ほおずき」を指すそう。
夏になると、飲食店などで飾られているほおずきを見かけることが多くなりますよね。
食べられはしないけれどオレンジ色に色づいた可愛いほおずきを愛でる習慣がまだ残っているのは、日本人として嬉しいことです。
最近では食べられるものも多く見かけます。あのほのかに甘く、少し青臭い瑞々しさが大好き。
今年こそ、浅草のほおずき市に行きたくなりました。