誰そ彼

つやつやとした常緑の葉に橙色をした小花がたくさん咲き始め、甘い香りがあちこちに漂い出したら、金木犀からの秋本番が始まる合図。どこからともなく漂ってくるこの芳香に、思わずクンクンとあたりの匂いを嗅ぎながら姿を探してしまいます。

 

 

10月初旬は二十四節気で言うと「寒露」、露が冷たく感じられてくる頃のこと。

 

 

とは言え、現代の感覚では日中はまだ暑い日もあり、夜になってくると肌寒く虫の声が聞こえ始め心地よく過ごせる季節といったところ。金木犀が九里先まで香りが届くということで、「九里香」の異名がついたのも、透き通るような空気になるこの季節だからなのかも。

 

 

秋の風は、終わりに向かって吹いているよう。たそがれや暮れゆくもの悲しさと、絶頂期を過ぎていると意識せざるをえない時間。

 

 

抜けるような青い空、透明で澄んだ空気、柔らかに降り注ぐ光、そしてそこに潜む暗い闇。その瞬間の行間と美しいイメージがほとばしる、10月はたそがれの国。

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